スポンサーサイト

  • 2020.01.12 Sunday

一定期間更新がないため広告を表示しています

  • 0
    • -
    • -
    • -

    IBPE(志賀理江子)第2弾 ! + 青野文昭一品展 !

    • 2019.12.22 Sunday
    • 17:11

     本題前に年末年始の営業につきお知らせです。

     例によって火曜のみ定休を頂き、他日は通常営業いたします。

     なので、大晦日がお休みです。

     元日から開きますので、よかったらお立ち寄り下さい〜。

     

     閑話休題。

     さて11月から始まった、志賀理江子さんによる「 Independent Bookstore Print Editions(以下 IBPE) 」。きのう展示替えしました!第2弾です。

     

     

     前回に引きつづき今作も写真集『 Lily 』(2007)からセレクトしました。

     タイトルは「 Tomlinson FC 」(2005)。耳を覆いに殺到する腕が鮮烈な作品です。

     

     作家がイギリスへ留学していた折に、地元のフットボールクラブに依頼して制作したと伺いました。好きに振る舞ってとだけ彼らに伝え、あれこれ試しているうちに撮れた一枚なのだそう。

     それにつけても不思議な佇まいです。出しぬけにこんなシーンが生まれるなんて、どんな現場だったのかしら。。

     

     前作と比べたらオーソドックスな額装ですが、写真はマットで抑えず浮かしています。作品のどこか浮遊感漂う幻想味を下支えしてくれています。

     

     初回から台座代わりに敷くこの布切れは、撮影の小道具としてかつて再利用されたものをさらに転用しています。傷み具合がなかなか味わい深い。。

     

     IBPE のエンブレムがここにも!

     

     先にもちょっとだけ触れましたが、本企画では作品を展示販売するのに従って参加書店もテキストを寄せる申し合わせになっています。せっかくなので、こちらにも掲載しておくことにしました。よかったらご笑覧下さいませ(なお初回分も追記したので、よかったらこちらの記事からどうぞ)。

     

     椅子の向きを無闇と変えたがる人がいる。まっすぐ腰を下ろして何らさし支えない場合ですら、いたずらに動かすあまりかえってもたついたりする。 座り心地がどうというより、本人の存在そのものを持て余しているのかもしれない。収まりの悪いわが身をどうにか仕切りなおそうと抗っているようだ。 カフェなどで見かけるたびに、不器用さがじれったくも不思議と憎めずつい見守ってしまう。たぶん彼らなりに切実な儀式なのだ。存在することへの違和を鎮めるために。

     

     

     『Lily』(2007)所収の写真はどれも霞がかって幻想味を帯びている。再撮影を重ねて故意に鮮明さが奪われているせいだ。表象を累乗した分だけ、被写体は否応なく実際の存在からはぐれてしまう。反面そこにこそ幻想の宿る余地が生じる。こうでしかありえない現実に抗って、ありうべきもう一つの世界が手繰り寄せられる。

     現実を仕切りなおして別の生を再開すること。たぶん再撮影はそのための切実な儀式なのだ。手法としての価値以上に。

     

     本作はその意味で典型といえるかもしれない。これほど形式と内容が緊密に連携している例は珍しい。 画面の霞みに応じて現実味が薄らぐ一方、歩調を合わせるように被写体じしんも視聴覚を断ち現実から撤退している。けれど必ずしも無感覚に陥るとは限らない。裏腹にも耳を塞ぎに押し寄せる他者の手が、触れられる側の官能を呼び覚ます。硬く閉じられたその身の奥には、他者たちと交感しあう無数の幻想が溢れているに違いない。 群れる腕による放射状の構成は、引き蘢ると同時に幻想が湧きだす双方向の律動を暗示している。

     

     IBPE は火星の庭さんでも同時開催中です。見比べて楽しんで頂けたらなと思います!

     当企画のホームページが新調できました。どぞ〜。

     

     それから、、じつは数日前から青野文昭さんの展示もひっそり始めました。一品だけですが、まじまじと向き合うにはよい作品です。こちらも合わせてぜひ!

     

     こんなところにクリーチャーが!という佇まい。巣食っているというか。

     

     梱包資材として使われていたプラスチックのバンドかしら。結わえられ打ち捨てられていたものに合板が添えられています。たぶん2017年作。

     

     そして、、ご近所のせんだいメディアテークさんでは大きな企画展が、また大町のターンアラウンドさんでも個展が開かれています。さながら青野祭り(青葉祭りみたい!)です。こんな多くの作品を同時に見渡せる機会はそうざらにありません。お見逃しなく!

     

     それから、つい紹介するタイミングを逃したままの本がありました。新刊ですが弊店でも扱ってますー。

     

     

     手前右から、、

    『東北の古本屋』折付桂子 著、日本古書通信社、2019、¥1000+税

    『青色とホープ』一方井亜 著、七月堂、2019、¥1300+税

    『白日窓』同上、思潮社、2014、¥2200+税

    『疾走光』同上、思潮社、2011、¥2200+税

    『仙臺村通信 神戸へ出張編』門眞妙、2019、¥350(税込)

    志賀理江子さんによる Independent Bookstore Print Editions シリーズ始まりました!

    • 2019.11.15 Friday
    • 20:30

     唐突かつひっそりで恐縮ですが、本日から志賀理江子さんの作品を展示します!

     

     

     作家の発案になる「 Independent Bookstore Print Editions(以下 IBPE) 」シリーズの一環です。

     IBPEとは、、今展を皮切りに始まる、志賀さんと本屋による共同企画です。ステートメントを引いておきます。

     本屋がなくては生きてゆけない写真家志賀理江子が、インディペンデントブックストアの店内にて店主と選んだ作品を、ユニークピースとしての1点に制作、店内に展示販売するシリーズです。

     

     

     じつはこの春先に志賀さんからお声がけ頂き、以来ちょっとずつ準備を進めておりました。ようやくお披露目できて嬉しいです。

     作品は、作家本人がサイズや額装にまでこだわって仕上げた一点もの。例によって展覧会だとイレギュラーにあしらわれることが多いため、額入り姿がとても新鮮です。ついつい端正な佇まいに見とれてしまいます。

     

     しかも、、火星の庭さんと同時開催しています。弊店とはまた別の一点ものがご覧頂けるのです。

     拠りどころは期せずして両店とも同じ写真集なのですが、毛色はまったく異なる系統を互いに選んでいます。

     『 Lily 』から、弊店は「 Piano 」、火星さんは「 I wanna be a scientist 」です。

     

     なお、販売につきましては当面店頭のみで承ります。

     

     額縁はタモ材。ゆったりかつしっかりした幅があり、内側へわずかに傾斜しています。連続して垂直に落ち込む深み部分は金仕立てになっており、黒白のプリントをじわっと引き立てます。

     

     函には書店主から作品へ寄せたテキストが添えられています(本文はこの記事の最後に追記しました)。箔押しされた IBPE のエンブレムが恰好いい!

     

     当展の記録集です。古本をスクラップブック風に転用しています。弊店では絵本を利用していますが、火星さんはまた違う本。店ごとにどんな本がピックアップされるかも見所のひとつです。

     

     こんな風にそのつど作品や展示の情報を追加してゆきます。情報の編集、それにカットや貼付は作家本人が手がけています。この辺のセンスも面白いです。

     

    2019.12.22 追記

     本作へ寄せた書店主からのテキストを公開しておきます。

     母方の親戚が集まると、決まって幽霊のはなしになった。ほら、こないだ亡くなったあの人、また来たの。口々にそう告げてはうなずき合う。そういう血筋らしい。ところが何の因果か私だけが勘に恵まれなかった。輪に入ろうにも相槌すらおぼつかない。

     それだけに心霊写真は重宝した。なにしろ私にも見える。ただ、大人のおしゃべりに倦まずついてゆくにはまだ年端が足りなかった。結局は頭越しに聞き流すはめになる。卓の片隅でためつすがめつ写真に食い入っているのが常だった。

     

     

     志賀の「 Piano 」シリーズは、仕舞ってあったプリントにあえて手を加え、それを再度撮り直すことによって生み出された。

     写真に魅了されて間もないころ、彼女は手近なものをアレンジして片っ端からシャッターを切っていたという。わけても固よりあった身体への興味から、様々な仕草を身内に振り付けては記録した。当作の元になっているのもそのうちの一枚だ。裸なのは姿態を隈なく観察したかったためらしい。

     やがて大学に入ると、写す対象ばかりか写したプリントまでアレンジし始める。穴をあけたり引き裂いたり、あるいは火をつけて歪ませた挙げ句に灰にしてしまったり。どうやら一方的にイメージを構成するだけでは飽き足らず、イメージに働きかけて返ってくるその手応えを求めていたようだ。当作はその延長にあたる。卒業後に手がけられたそうだ。

     

     

     次第に家中が気ぜわしくなり子どもには身の置きどころがなくなる。そっと抜けだしてはよく河原で時間をつぶした。ムクドリの飛翔は格好の見世物だった。数十万の群れが一斉に、とんでもない勢いで駆け抜け急旋回を繰り返す。伸縮自在に天が閉じては開く。 いうまでもなく統率者はいない。なかには軌道を逸れたり中途から合流するものすらいる。あくまで個体は自由なのだ。きっとめいめいが近傍を察し、それが折り重なった果てに大きなうねりがもたらされるのだろう。てんでばらばらな個のゆらぎを調停するかのように、群舞が生起する。ムクドリ自ら化けるのだ。何だか私にも幽霊を見られた気味がして、親戚への気がねが多少はやわらぐ。

     

     

     対象と相互作用するさなかに、来るべきイメージを見据えること。周知のとおり後には、他者をも巻き込みよりラディカルに展開される性向だ。けれどその萌芽はすでにここに見てとることができる。

     

     

      帰るとすでに日も傾き会食が始まっていた。
      案の定叱られた。
    

    「志賀理江子 ヒューマン・スプリング」展をみて + 2019.5.15 追記

    • 2019.05.05 Sunday
    • 19:10

    * 2019.5.15 追記

     つい先日から門眞妙さんによるイラスト新聞(?)『仙臺村通信号外 最終平成特集』を販売しています。

     表がポスター、裏には地元仙台に取材したイラストとマンガが掲載されています。

     

     1枚¥350 +税(画像だと分かりづらいですが、店内にてポスター面を掲示しています)

     

     取りあつかう期間は概ね7月ぐらいまで。それにあわせて原画の展示もしております。ぜひお越しを〜。

     

     

    * 以上追記

     

     このゴールデンウィークの直前に、もう何年ぶりになるかしら?相当ご無沙汰だった東京まで足を伸ばしてみました。お目当ては知人の展覧会です。青野文昭さんと志賀理江子さん。青野さんは森美術館「六本木クロッシング2019展:つないでみる」に参加なさり、志賀さんは東京都写真美術館で個展「ヒューマン・スプリング」を開かれています。

     なるべく早めに感想を残そうと思っていたのに、何やかやと一向に進捗せずもう明日5/6(月)が志賀さんの最終日になってしまいました。とほほ。。いっぽう青野さんのはもうしばらく5/26(日)まで見られるので、チャンスのある方はぜひに。

     とりあえず志賀さんの分だけでも備忘録として書きつけておきます。

     青野さんは年内にも大規模な個展が予定されているので、それを俟って改めて触れられればと。。

     それにつけても53階にある森美術館のさらにうえ、屋上デッキからの眺めがすごかった。あんな高さで風に吹かれる経験なんて初めてだったので超気持ちよかったです。

     

     本題に入る前にもうひとつ大事なお知らせがあります。

     折よく(?)志賀さんの写真集を入荷しました!絶版久しい『カナリア』です。しかも未開封で、ゆえに帯も完備してます。これは珍しいですよ。もちろん1点限り。

     

    『カナリア CANARY』(志賀理江子 写真、赤々舎、2007初版)¥28,000 -

     

     他にも『螺旋海岸 | album』(2013)と『Blind Date』(2017)も新刊で扱っています。サンプルも店内にございますのでぜひ!

     ちなみに『螺旋海岸 | notebook』(2013)の古本も1点のみ在庫してます。

     

     閑話休題。

     以下「志賀理江子 ヒューマン・スプリング」展の感想です。

     

    『志賀理江子 ヒューマン・スプリング』(丹羽晴美 編著、東京都写真美術館、2019)

     

     背丈を超すボックスが会場一杯に林立していました。面ごとに異なる写真が貼り込まれ、移動に応じて刻々と景観が変化します。隣り合って見えていた写真もやがて前後し隠れてしまったり。見通しが悪いどころか、踏み込むほどに深い森の奥へ迷い込むかのようです。

     さりとて無秩序というわけではありません。むしろ強いて型に嵌めようとしている節さえ窺えます。というのも全てのボックスが会場と平行しているのです。整列を避け、適度に散らされてはいるものの野放図な写真にはどこか窮屈そうです。

     かたや中央付近には一点だけ、骨組みしか備えていないボックスも紛れていました。例の平行が利いているせいか、同じ直方体である当の会場までも連想させます。何しろともに空っぽな容器どうし、トポロジカルに響き合っているのです。周到にも壁面の方にも写真は一切架けられていません。

     

     空洞を巡るこの共鳴は、さらに「表象」を意味する「ルプレザンタシオン」というフランス語まで招き寄せます。かねがね志賀さんが拘る言葉であり、古義に「喪の黒布で覆われた空の棺」を含むのです(cf. 本展カタログ p117、p119、p128)。もとより「表象」自体にも空虚が控えています。例えば写真なら、今ここには現前しない何ものかを示しています。写って見える表象はその痕跡でしかありません。生の記録を焼きつけるその同じ手立てが、裏腹にも否応なく不在をすなわち死を縁どってしまうのです。

     ともあれ骨組みにしろ会場にしろ、ともに棺や表象そして写真とさえ通じています。だとしたら場内を彷徨う道ゆきは、棺に足を踏み入れる言わば死への階梯と看做せるかもしれません。おそらく展示作品の不可解さ、あるいは巨大化する理由もまさにこの点に由来します。写っている表象の訳の分からなさ、この理不尽さに撃たれる経験が死と等値されているのです。巨体は予め引きの猶予を封じ、捨て身を迫る作用を果たしています。

     

     その一方で、水平垂直ばかりが幅を利かすなか構わずはぐれてしまう軌跡が目を掠めます。地平の勾配です。例えば男性が顔を赤く塗りたくった写真であれば、水平線が斜めに写り込んでいます。たかが背景ではあります。されど同じプリントがボックスの裏面全てを占めるに及び、よもや見過ごすことも叶いません。まして会場の奥から見渡せば一帯が傾斜してすら感じられます。さながら赤ら顔を支点に座標が傾いてしまったかのように。全体にピントが甘く暗い写真のせいか、顔面が宙に浮かぶ目印に見えるのです。

     しかも一同に勾配が等しいため、共通する軸が予感されます。地軸です。そもそも当の被写体は、春のたびに躁を繰り返したという男性がモチーフになっています(cf. 本展カタログ p115、p121、p125-126)。季節の循環こそ、地軸の公転面に対する傾きに由来します。会場(= 写真)が静止した死の虚ろな空間だとしたら、そこを斜めに貫いてゆく軸線は生の象徴でもあるのかもしれません。

     

     ところで、撮影時にカメラを傾げる癖は初期の頃から認められます。正中線やフレームなど、既成の条件に対する違和の表れなのでしょう。とくに『カナリア』では、暴力的な角度が現実離れした印象をもたらしていました。今展でもやはり、所与の理不尽さへ向けた抵抗になっています。会場の構造やボックスの骨組み、そして死です。ただし対象を単に否定するのではなく、むしろそこに潜む別の条件を探り当てかつ糸口にして全体を読み替えてしまいます。

     なぜ赤ら顔の男性は裸なのか?なぜピンぼけの上にフラッシュが焚かれているのか?染みついた習慣なり構えでは皆目見当がつきかねます。理不尽極まりないにせよ、ひとまず写真に身を明け渡すしか手がなさそうです。その内側から経験を紡ぎ直すほかありません。例えばひとつの可能性として地軸の発掘をとおし、現前するこの空間とは別の座標軸上に生まれ直すことが試みられます。写真による狙撃には、まさにこのような再生が賭けられているのです。

    志賀理江子『ブラインドデート 展覧会』取り扱い開始!!

    • 2018.05.09 Wednesday
    • 14:21

     『河北新報』の夕刊で、弊店の小品展を紹介して頂きました。きのう5/8(火)付です。記者さん、門眞さん、ありがとうございましたー。

     

     画像は門眞さんよりご提供頂きました。重ねて多謝!

     

     先日、市内にあるカフェショップへ、展覧会を拝見しに伺いました。ガラス作家である後藤洋平さんと、おもに鏡を使ってインスタレーションを手がける平尾菜美さんによる二人展です。

     じつは、いま弊店でドローイングを展示して下さっている門眞妙さんが企画に携わっています。

     

     入室するとすぐ、中央に据えられたお二人の共作が出迎えてくれます。下手には後藤さんのガラス、上手には鏡や生地を用いた、平尾さんのインストラクション・アートめいた作品が配されていました。

     部屋が北向きのうえ窓が三方に大きく開け、おまけに当日は薄曇りのお昼だったものだから、安定した光が柔らかに降り注ぎ、作品たちが環境にしっとり馴染んで見えました。とても品よい感じ。

     

     今回、鏡を組み込む作品は、平尾さんのみならず後藤さんも出品なさっていました。両者の扱い方を見比べると、傾向というか資質の違いが顕著に窺えておもしろかったです。

     

     かたや後藤さんは、ガラス板に小石をふたつ載せ、適度に間をあけたうえで下方に鏡を敷きます。他方、平尾さんは鏡の表面に「see eye」などミニマルな単語をあしらいます。

     前者は小石の裏を照らし、作品じしんが再帰的に内へ折り返す構造をもち、後者は観者の顔を映しだし、リフレクション(反射/反省)のダブルミーニングを外へ突きつけます。

     あるいは、前者が観者を惹きつけ没入を促すのに対し、後者は見られることよりも見返すこと、観者への働きかけが賭金になっています。

     

     ところが、いざ共作に目を向けると、後藤節が色濃いのに対して平野さんは鳴りを潜めてしまっているかに見受けられました。

     当の作品はというと、まず後藤さんがガラスコップを制作し、その表面に平尾さんの采配に従って漢字が施されたのだそう。「水」や「腕」など、「飲む」所作にまつわる漢字が、向きも大きさも様々に鏤められています。

     一字ごとてんでに散る漢字は、「飲む」というテーマを漠然と発散するばかりで、こちらに働きかけてくる気配がないのです。かえって、コップがもつ「飲む」ためのフォルムに追従しているようにしか見えませんでした。支持体の強さに屈しているというか。畢竟装飾以上には見えてこないとうか。

     ほかの鏡や生地の作品であれば、コップほどには支持体のフォルムが主張しないせいか、記された単語の観念が即物的な支持体から適度に自立して見えます。

     あるいは、彼女がインスピレーションを受けたという新国誠一だったなら、漢字の選択と布置のどこかにきっとアイロニーを忍ばせると思います。意味の多重化によって観念を強化し、支持体と拮抗させるわけです(ただ、平尾さんの持ち味は、どうやらニュートラルなことばを観者へじわじわ染み込ませる作用のようなので、アイロニーとは相性がよくないかもしれませんが)。

     

     個人的には、鏡をアクセサリーに仕立てるシリーズが俄然興味深かったです。アクセサリーってそもそも相手から見られるためのものなのに、逆に相手を映すばかりかよりによって見返すなんて!

     それに、そのフォルムが作家の輪郭のネガを象っているというアイデアもすばらしい。例えば、軽く握ってできる掌の虚の空間を縁取って鏡が成形されています。ヴォイドが視線を吸い込んでは、かつ弾き返す。かっこいい。

     

     この二人展はもう今週いっぱいまでです。未見の方はお急ぎを!

     あわせて同会場では、後藤、平尾両氏の作品集を出版なさっているアートブックレーベルDOOKSのポップアップショップも開かれています。仙台ではまとめて手にとれる機会はそうないはずです。あわせてぜひ!

     

     「檸檬水」

      後藤洋平平尾菜美

      2018.4.22.sun – 5.13.sun

      金・土・日・月のみ営業

      12:00 - 18:30

      design labo necco sendai

      仙台市青葉区一番町1-15-38 小林ビル3F

     

     閑話休題。。

     

     それから、先日ついに写真家志賀理江子さんの最新刊を入荷いたしました。昨夏、丸亀市猪熊弦一郎現代美術館(MIMOCA)で開かれた個展「ブラインドデート」カタログです。

     作品はもとより、論考やトークイベントの記録など見どころも読み応えも十二分です。いがらしみきおさん(まんが家)や飴屋法水さん(美術家)、竹内万里子さん(批評家)、それに土田朋水さん(『ビッグイシュー日本版』編集部)らと濃厚な意見が交わされています。

     サンプルもございますので、ぜひともじっくりご覧頂けたらと思います。

     なお、単体では4,299(税込)ですが、昨年上梓された姉妹編たる写真集『Blind Date8,640(税込))とセットでお買い上げ頂くと、ともに消費税分をサービス致します!

     つまり、『ブラインドデート 展覧会』3,980 Blind Date8,000)で、、11,980!となります!!この機会をお見逃しなく〜。

     

     

     

     三分冊がバンドで留められています。志賀さんらしく無造作な風情がまたまたよいのです。

     

     

     写真のみを収めた『インサイドアウト』には、会場やそのバックヤードが志賀さんご自身の手で写しとられ、展覧会全体が再構成されています。独立した写真集の体裁です。

     かたや『リレートーク&ワークショップ』には会期中に開かれたトークとワークショップの記録が、他方『テキスト』では志賀さんご本人の文章と担当キュレーター国枝かつらさんの論考を読むことができます。

     

     それはそうと、先日山田尚子監督の最新作「リズと青い鳥」を見てきました。というか、もう4回も見てしまいました。

     すごすぎます。。

     

     

     予想をはるかに上回り、いまだに圧倒され続けています。寝ても覚めても、カットのひとつひとつを反芻してばかり。

     これはどうにかしてことばにまとめ、仮にでもよいから何らかの区切りを付けておかないと収まりがつかない、というか生活するうえでまずいような。。

     時間ないのにぃ。。

     

    志賀理江子写真展 ブラインドデート 第4期 続

    • 2013.07.04 Thursday
    • 19:45
     もうちょっとだけ延長させて頂けることになりましたー。志賀さんのご厚意に感謝です。
     先月のまま、今月15日まで展示を継続します。これが本当に最後の機会。ぜひお見逃しなく!

     長期にわたり作品たちと過ごしていると、いつまでも一緒にいたくなってしまいます。それに、不思議と見え方も変わってきたり。
    当初は、被写体が見つめる先、つまり彼岸へ意識が促されたものでした。ところが、見慣れてくるうち、むしろまなざしのたもと、眼を囲う顔のあり方に注意が向くようになってきました。
     女性が彼岸を望む一方で、男性は路上の現実を見据えています。すると、女性の顔は、中央を占めているにも拘らず、じつは画面内に居場所がありません。彼岸と此岸に引き裂かれ、いきおい浮遊しはじめます。
    ところで、撮影者による「笑わないでレンズを見つめて」という指示。これは必ずしも顔から表情を差し引くばかりとは限りません。表情の欠落は、対面する他者(撮影者)との関係をも絶ち、その下に潜む傾向を露見させます。いわば、顔面そのものが微分化するのです。例えば、恋人の背に凭れる頬は、信頼感や親密さのみならず、倦怠や弛緩すら湛えています。
     顔は、寄る辺をなくし、宙づりになったまま、多様な傾向が拮抗する場として機能しているようです。



     日が落ちると、店内のあかりに照らされ、透けて浮かび上がります。画像だと伝わりづらいですが、とてもきれい。上は屋内、下は屋外から。


     これまで展示してきたもの、またそこから洩れたものすべてをお手にとってご覧頂けます。なかなかないですよ!

     ちなみに、志賀さんのお次は、青野文昭さんにお願いしています。今月中旬から12月まで。1ヶ月ごとに展示替えします。
    乞うご期待!

     最後にいくつかご報告。。

     おかげさまで、今年も無事に本の月が経過いたしました。一箱古本市を始め、Book!Book!Sendaiの各種イベントにご来場下さったみなさまへ深くお礼申し上げます。
     また、タナランさんでの「つくってきたもの、よんできたもの」関係者の方々には格別の感謝を。とくに、会場主のタナランさんと、樋口さん、佐藤さん、色々お世話おかけしました。本当にありがとうございました!
     残すところ、最後のイベントが火星の庭さんで実施中です。「<タコシェと火星の庭の往復書架」。7/8(月)まで。ぜひ見届けて下さいねー。

     それから、今月からひっそり(?)『河北新報』さんの夕刊(仙台圏のみ)で「まちかどエッセー」なる欄を担当させて頂くことになりました。10月まで隔週ペースで7回続く予定です。皮切りが7/1(月)だったので、次は7/22(月)。よかったらご笑覧下さいね。
     以下、前回の分です。表記が初出と若干異なります。

    * タイトル *


    * 本文 *
     窓に溢れる光につい見とれてしまう。日ざしの強いこの時期は、ましてうっとりさせられる。作業をさっさと片付けたいのに、どうにも抗えない。開店前のいっとき、薄暗がりに佇むのが日課になっている。
     人が往き交い、向こうをクルマが走り抜ける。風か小鳥か、その仕業に梢がなびく。絶え間ないきらめきが視界を満たす。ふと、19世紀末、映画を初めて見た人たちに思いが至る。彼らを驚かせたのは、きっと内容ばかりではなかったに違いない。何しろ、変哲のない記録映像でしかなかったのだから。むしろ、イメージが生まれるその不思議さに目を奪われたのではなかったろうか。
     単なる光の溜まりから、くっきりイメージが結ばれる。それは、視界が切り開かれる経験であり、応ずる体勢の立て直しをも伴う。釘づけになる身体は、実は潜在的にめくるめく変容に曝されている。かえって、その兆しが充満するあまり、身動きが取れなくなるというべきか。光の虜になるのも無理からぬことのように思えてくる。
     ところで、光が、必ずしも視覚的なあらわれを導くとは限らない。例えば、植物なら最終的にデンプンを生みだす。光からエネルギーを抜き取り合成するのだ。光という問題に対する回答として、種ごとに多様なイメージがもたらされる。光合成においては、化学的な組成そのものがイメージなのだ。無論、随意に創作しうるものではない。光こそが、葉緑体や眼を養い、イメージを生成する培地をなす。生物になしうるのは、ただ光に浸り、ありうべきイメージを探り当てることに限られる。応答を誤れば潰えもする。光源に誘われ、焼身してしまう蛾が典型だ。
     何もこれは、進化の長い過程だけに留まる話ではない。光に触れるたび繰り返し問われうるはずだ。映画や絵画はいうに及ばず、窓からのありふれた眺めですら、新たなイメージの到来を待ち受けている。

    志賀理江子写真展 ブラインドデート 第4期 続

    • 2013.06.12 Wednesday
    • 23:04
     いよいよ佳境に突入します!
     3月から4期に分けて展示替えをして参りましたが、ついに見納めです。
     未見の方はもとより、前期をご覧になった方もぜひ見届けて下さいね。
     展示から漏れたものも含め、ほぼ全作品を手にとってご覧頂けるようご用意しています。


     これまでとは若干異なり、位置に多少の変化が確認できます。


     「ブラインドデート」というタイトルは、走行中のカップルが目隠しをするという、志賀さんのヴィジョンに端を発しています(第1期 続の記事を参照)。当初はあくまで幻想に過ぎなかったのが、100組に取材を進めるうち、なんと実演してくれるカップルが!伺えば、彼ら1組だけだったといいます。




     無造作にうち重ねられるプリントたち。
     2009年にバンコクで滞在制作され、現地で発表したのち整理する間もなく引き取ってきたそうです。そのため、裏面にはテープが残っていたり、端々にすれや傷みが確認できます。この風合いに、志賀さんが美を見ているのはおそらく間違いありません。しかし、どうもそればかりでもないようです。
     彼女はよく「写真の振れ幅」について語ります。つまり、おなじ写真でありながら、他愛ないスナップが一転して遺影になったり、大多数には見向きもされないのに、当人にはかけがえがなかったりする、あの揺れ動きです。同様の振幅は、写真を扱う彼女じしんの手際にも見てとれます。展示に応じて一枚ごと労るように触れながら、あるときなど膨大に重ねたプリントを万力で締め上げたりもします。写真との距離感が、扱うたび即物的に露呈し、そのつど変化を見せるのです。
     そして、今回の傷み具合もまた、美的な趣味を超えて、写真のあり方そのものを問うているように思われてなりません。経年の劣化を、なんら否定的な契機ではなく、むしろ存在論的な条件として受け容れること。この姿勢は一貫しています。

    ★ &#3609;&#3633;&#3604;&#3610;&#3629;&#3604;/ブラインドデート 志賀理江子

     「これだけ多くのバイクに乗った人がいれば、きっとふざけて彼の目を手で隠して走り、死んだ恋人たちがいたかもしれない、と思ったが、そんな事実はなかった。
     バンコクですれ違った100組の恋人たち。彼らとともに5分間バイクを走らせる。ところが、視線を合わせたいのに、スピードを同期させることすらままならない。抜きつ抜かれつしながらも、いやだからこそ、まなざしは互いに相手を追いかけ、しがみつく。危うい必死の見つめあい。
     2009年に撮り溜められた写真を展示します。およそ1ヶ月ごとに差し替える予定です」。


     会期:2013.3.8.金-6.30.日
     時間:10:00-20:00(土日-19:00)
     火曜定休
     会場:書本&cafe magellan(マゼラン)


     最後に諸々の告知ですー。
     早いものでもう6月。本の月です。このブログが滞っているあいだにも、Book! Book! Sendaiのイベントが各種すでに実施されています。
     じつは、弊店も出品しているミニ古本市が、1日からTURNAROUND(ターンアラウンド)さんで始まりました。開場主のタナランさん、火星の庭さんとご一緒に棚を作らせて頂いています。期間は今月いっぱい。よかったらお散歩がてら覗いてみて下さいね!絵本をはじめ、アート関連の本がたくさんですよー。

     そして、6/19(水)からは、おなじ会場で展示の企画も控えています。これまた3店舗の共催です。
     各店が作家を2名推薦し、その蔵書とともに作品を展示して頂くという趣向です。いうまでもなく、蔵書と作品が一義的に結びつく謂れはないでしょう。けれども、無関係なんて尚更ありえません。両者のあわいに、きっと色んな想像がめぐるはずです。どんな組み合わせが見られるのか、ぼくも今から楽しみ。乞うご期待!
     弊店からは、樋口佳絵さんと佐藤純子さんにお願いしています。
     前者は、以前に弊店でも展示して頂いたことがあります(樋口佳絵小品展の記事を参照)。近年だと、書籍(久世光彦さんや天童荒太さんなど)の装幀にも作品を提供なさっており、見覚えのある方も多いかもしれません。テンペラと油絵を混合させて、おもにヴァルネラブルな子どもをモチーフに絵をお描きになっています。ちょうど今だと、岡山市にあるサテライトさんで個展を開催中です。
     また後者は、ゆるゆるの日常をまんがに綴り、5年にもわたり出会いがしらに押し配りを続けていらっしゃいます。一年前にはそれをまとめて書籍化、完売を達成。お手にとられた方もいらっしゃると思います。ほかにも、ミシマ社ウェブマガジンで連載をなさり、東京にある貝の小鳥さんで個展を予定されています。

     さてさて、どんな展示になるか、お楽しみに!委細はまた後日お知らせしますね。

    志賀理江子写真展 ブラインドデート 第3期

    • 2013.05.10 Friday
    • 13:30
     先の定休日に作品を差し替えて頂きました。志賀さんにはほんとう、いつもお忙しいなか深謝です!



     大半が運転席を男性が占めるなか、今回は珍しく女性どうしの二人乗りが1点のみ確認できます。


     おなじカットがサイズを変えて再登場するのもまま見受けられます。



     本にまぎれる写真はもうお馴染みさん。


     水玉シャツのサテン地からムード歌謡が聞こえてくるようです。。これに限らず、全体にわたり、気取りのない身なりや居ずまいが、どこか日本の昭和を思わせます。

     さてさて、志賀さんの展示が始まってもう3ヶ月め。いよいよ来月がクライマックスです。まだの方、ぜひご覧下さいね!
    展示そのものの紹介はこちら。シリーズ名「ブラインドデート」の説明はこちらをどうぞ。

    志賀理江子写真展 ブラインドデート 第2期

    • 2013.04.11 Thursday
    • 17:22
      おととい、展示替えを致しましたー。志賀さんには、いつもお忙しいなか本当に感謝です。ありがとうございます!

     位置はそのままに、すべて差し替えられました。ただし、カラーの構成写真のみ据え置かれています。

     ハイライトなど、黒白のメリハリが効く写真が増え、雰囲気がめっきり変わりました。多くの方にご覧頂けたら嬉しいです。ぜひどうぞ!


     ★ &#3609;&#3633;&#3604;&#3610;&#3629;&#3604;/ブラインドデート 志賀理江子
      「これだけ多くのバイクに乗った人がいれば、きっとふざけて彼の目を手で隠して走り、死んだ恋人たちがいたかもしれない、と思ったが、そんな事実はなかった。
    バンコクですれ違った100組の恋人たち。彼らとともに5分間バイクを走らせる。ところが、視線を合わせたいのに、スピードを同期させることすらままならない。抜きつ抜かれつしながらも、いやだからこそ、まなざしは互いに相手を追いかけ、しがみつく。危うい必死の見つめあい。
     2009年に撮り溜められた写真を展示します。およそ1ヶ月ごとに差し替える予定です」。
      会期:2013.3.8-6.30
      時間:10:00-20:00(土日-19:00)
      火曜定休
      会場:書本&cafe magellan(マゼラン)



     また、今回の展示と直接には関係ありませんが、来月はじめには志賀さんを交えたトークイベントが開かれます。会場はご近所のcafe haven't we metさんです。
     家具などプロダクトデザインを手がける、大阪のgrafさん。その代表をお務めになる服部滋樹さんのお相手として参加なさるご予定です。志賀さんは高校の時分からgrafさんに出入りなさり、とても長いおつきあいなのだそう。展覧会も過去3回、同所で開催しています。じつは、そこで赤々舎の姫野さんとも知り合い、やがて『CANARY』の出版へ繋がったのでした。

     ★ トーク「ようこそ ようこそ」
      日程:2013.5.3
      時間:
       第1部 13:00-15:00(服部滋樹)
       第2部 16:00-17:30(服部滋樹 × 志賀理江子)
      料金:両部¥2500/各部¥1500(付1ドリンク)
      会場:cafe haven't we met
      仙台市青葉区国分町3-9-2 第五佐々木ビル3F 
      備考:要前売り券。
      販売個所は、cafe haven't we metAntique Show


     ところで、昨年から始まった仙台アンデパンダン展が、今年も参加者を募っていらっしゃいます。どなたでもどんな作品でも出品できる展覧会。開催期日は、5月21〜6月2日まで。会場は、市内のギャラリー6箇所です。受付の期限はもうすぐ4月20日とのこと。迷ってる方はお急ぎを!
     詳しくはこちらをご覧下さい。
     なお、弊店でもエントリーシートを兼ねたフライヤーを配布しています。

    志賀理江子写真展 ブラインドデート 第1期 続々

    • 2013.03.27 Wednesday
    • 19:08
     志賀さんが「あいちトリエンナーレ 2013」に参加なさることになりました。会場はご生地の岡崎市です。パチパチパチ!
     以前お伝えしたように、青野文昭さんやリアスアーク美術館もすでに参加が決まっています。会期は8〜10月にかけて。少しでも足をのばせそうな方がいらしたら、ぜひに!
     この夏は、弊店でも青野さんに展示をお願いしています。あわせてお楽しみにー。


     それから、ブラインドデートの会期中、志賀さんの全写真集を閲覧用として店頭に設置しています。処女作『Lily』(2007)をはじめ、同じく木村伊兵衛賞の対象となった『CANARY』(2007)と、後にそれを再検討した『カナリア門』(2009)。さらに、先ごろ上梓されたばかりの写真集『螺旋海岸|album』とテクスト集『螺旋海岸|notebook』(ともに2013)もご覧頂けます。

     そして、、『平成21年 北釜写真アルバム』(2012)は必見です。「螺旋海岸」とあわせ、密かに北釜三部作(!?)を構成します。
     2008年から大地震が起こるまで、志賀さんは名取市にある北釜という集落で「写真屋さん」として暮らし、行事の記録を村に収めていました。その仕事の成果です。彼女の貴重な一面が窺えるばかりか、村の風習や住人たちの佇まいにはつい引き込まれてしまいます。
     なお、どれも販売はしておりません。あしからずです。。

     閑話休題。


     こんなところに!

     ★ &#3609;&#3633;&#3604;&#3610;&#3629;&#3604;/ブラインドデート 志賀理江子

      会期:2013.3.8-6.30
      時間:10:00-20:00(土日-19:00)
      火曜定休
      会場:書本&cafe magellan(マゼラン)


     かねてご紹介してきたとおり、バイクを二人乗りするモチーフは、彼らに併走しながら撮られています。ところが、走行中なのに被写体は滅多にぶれません。かつまた、背景が流れることもありません。疾走する事実は、わずかに髪のもつれから察するしかないのです。時が止まり、画面は思いのほか静まり返っています。おそらくこれは、中央を占める女性がことごとく表情を欠いていることに由来します。紛れもなく観者を向いているにも拘らず、その瞳が一体なにを湛えているのか皆目見当がつかないのです。まなざしは、身体をすり抜け遠く彼岸を望んでいます。交流は封じられ、一切が静止します。被写体を見ようにも叶わず、彼岸へ促されるばかりです。否応なく観者のまなざしも写真のそれに折り重なります。もはやまなざしは誰のものともつきません。純粋な形式に昇華するのです。

     いっぽう運転手の視線は現実に属しています。彼の前方、つまりフレームの外にのびる道路を示唆し、走行がこの先も続くことを請け合います。ところで、会場にはサイズも高さもさまざまに所構わず写真があしらわれています。ともすれば、無秩序な配列にも見えかねません。しかし、走行する向きがみな一様のため、全体が相俟って一方向へ力強いうねりを生みだします。会場が狭いだけに、あたかもつむじ風が写真たちを巻き上げているかのようです。うねりは、次から次へ被写体を押し流し、かたや移ろう地を形成し、同時に図として不変項を浮揚させます。水平に継起する被写体、とりわけ女性の身体を振りほどき、まなざしそのものが屹立するのです。

     あたり一面をまなざしが埋め尽くします。ただし、そのわりに圧迫感を生じません。もとより、観者に注がれているわけではないからです。まなざしは、あくまで彼岸を見据える形式です。見る見られるという関係はとうに失効しています。写真と観者の分別は成立しません。人称性を欠くまなざしだけが会場を覆います。


     ここにもいました。

     余談ですが、志賀さんには珍しくすべて黒白です。もちろん「ブラインドデート」全体としてはカラーも数点含まれます。ところがそれも、モチーフが異なり構成写真に限られます。
     モノトーンはほかにも確認できないことはありません。必ずしも多くないものの、決まって「彼岸」が関わるときにのみ登場します。例えば「螺旋海岸」の展覧会では、まなざしだけを写した「遺影」がありました。本来はカラーのはずが、極端なトリミングと引き延ばしが色を飛ばす結果になっていました。ただし、写真集では姿を消しています。
     いやそれどころか、1点だけ紛れもない黒白写真が採用されていました。それも、おなじモチーフの別のカットがカラーで添えられ、彼岸と此岸の対比も鮮やかに示されていたのでした。前者には「6 眠り」、後者に「5 さようなら」が割り振られ、此岸から彼岸への移行がはっきり印象づけられるのです。これは写真集にも踏襲され、ページをめくる線的な構造によって両者の前後関係がより強調されています。
     また『Lily』も黒白ではないとはいえ、基調はモノトーンです。私見によれば、撮影者が「彼岸」を担って制作したがゆえの結果です(「彼岸」については拙論参照。ただし直接にはモノトーンに触れていません)。もっとも、最後に制作された「Lily」シリーズだけは多彩です。おそらく次作『CANARY』へ跳躍するに臨み、自己相対化を施しているからだと考えられます。

    志賀理江子写真展 ブラインドデート 第1期 続々

    • 2013.03.16 Saturday
    • 12:39
      一説によると、県庁所在地のうち仙台が最も風の強い街なのだそうです。それにつけても今年は荒れ過ぎなんじゃないかしら。おかげで花粉がもう。。鼻腔がオーバーヒート気味です。いやそれよりも、外壁に野ざらしのまま展示している写真が、目を離した隙に吹き飛びやしないかと気が休まりません。出勤するたび真っ先に目を留めて「あぁまだある」なんて胸を撫で下ろす毎日です。。

     閑話休題。



    ★ &#3609;&#3633;&#3604;&#3610;&#3629;&#3604;/ブラインドデート 志賀理江子

     笑わないでレンズを見つめて、それだけ女性に告げてバイクに併走。ひたすらシャッターが切られています。2009年にバンコクを訪ねた志賀は、二人乗りで疾走する恋人たちをモチーフに選びます。甘美ながらどこか危うい彼女たちのまなざし。魅惑的です。会期中およそ1ヶ月ごとに作品を差し替えます。

     タイトルにある「ブラインドデート(blind date)」とは、面識のない相手とデートをすること。それをタイ語で表記したのが「&#3609;&#3633;&#3604;&#3610;&#3629;&#3604;」です。しいて日本語で発音すれば「ヌットボード」と読めるようです(近所のタイ料理屋さんに確認してもらったので間違いない、、はずです)。
     写された恋人たちのなかには、実際にブラインドデートを通して付き合い始めたカップルもいたことでしょう。しかし、必ずしもそれを条件に被写体が選ばれているわけではありません。このタイトルには、一般的な意味に加え、多様なニュアンスが込められているそうです。

     ひとつは、バイクで街ゆく彼らを眺めるうち、不意にとらわれてしまったという幻想です。ふざけて彼女がうしろから目を隠し(blind)、はずみで彼氏が手許を過り死んでしまう、そんな心中とも事故とも覚束ないできごと。もちろん、幻想を裏づける事実はありません。警察にまで問い合わせ、詳しく調査したものの、空振りに終わったといいます。ところが、この幻想は、滞在制作の通奏低音をなすことになります。やがて、ひと組だけ本当に目隠しをしてくれるカップルまであらわれ(危ないこと!)、それを撮り押さえすらするのです。
     ふたつめは、字義どおり盲目(blind)のカップルです。数多出会った恋人たちのなかでも、とりわけ彼らの印象が深く、じっくり取材させてもらったといいます(残念ながら、当時のノートは先の津波によって失われてしまったそうです)。見ることが叶わないにも拘らず、彼ら、とくに彼女の方が大の写真好きで、旅行先では必ず記念撮影を忘れないのだとか。そのための機材をいつも持ち歩いているそうです。いま展示しているこのカップルの写真も、志賀さんが立ち合ったとはいえ、彼らじしんがシャッターを切っています。バイクには乗らず、屋内で撮影されています。ちなみに、モチーフがカップルではない写真も思いのほか散見されます。より凝った演出が現場で加えられているものです。これを比較的小さくプリントし、大半を恋人たちのスナップが占めるなか、巧みに溶け込ませています。

     さて、タイトルにまつわるエピソードとしてはほかに、斜視の女性を写したものもあります。目線が外れているように見えてじつは本人には合っているというものや、あるいはその逆など。みつめあう視線は斜交いのまま、いっこうに透明な一致には至りえません(blind)。
     とりあえず、ぼくが耳に挟んだものだけ列挙してみました。さりとて、どうやらもっと多くの含みが秘められているようです。おそらく、写真と観者の関係をも示唆していると考えられます。詮索しだすときりがありません。もとより、作品をなおざりに、ことばにばかり拘泥したいわけではありません。ただ、志賀さんの関心が奈辺にあるのか、それがよく窺えるタイトルであることだけは確かです。

    PR

    calendar

    S M T W T F S
       1234
    567891011
    12131415161718
    19202122232425
    2627282930  
    << April 2020 >>

    看板犬からご案内

    営業時間
    10:00am-20:00pm
    土日のみ-19:00pm
    定休日:火曜
    仙台市青葉区春日町7-34
    お店のホームページはこちらです。

    selected entries

    categories

    archives

    recent comment

    recommend

    links

    profile

    search this site.

    others

    mobile

    qrcode

    powered

    無料ブログ作成サービス JUGEM