大嶋貴明個展 絵画の身体へ

  • 2015.10.29 Thursday
  • 22:00

 先日拝見してきたところ、とてもおもしろい展開になっていました。忘れないうちに、印象を書きとめておきます。
 会期は今週いっぱい日曜(11月1日)まで。
 なお、土曜日10月31日には、制作しながらお話もするという、なんだか大変そうだけど興味津々なイベントが予定されています。

 画像はすべてTURNAROUNDさんのホームページから転載

 作品はどれも、画面の大半をバイオレットが占め、そこへシルバーが割って入ります。かたや補色に近いグリーンも忍び込んだり。互いに相反する色相は、溶けこむことなく引き立て合い、地のホワイトともども色面を輝かせます。
 そして、その広がりは、たとえ単色であろうと複雑です。にじむ階調や筆触の勢いに一様ならざる時間が込められているのです。筆を足すにも、乾き具合が慎重に測られています。しかもそれが、切り取られては余所へ貼り込まれ、時間の断層を増幅します。
 まなざしは、断層に臨むやあえなく滑走を阻まれて、つどに応じてギアチェンジを余儀なくされます。タイムラグを踏み越えるに相応しい速度が要請されるのです。たとえば、シルバーは、グレーの色面にさしかかるや明度差へギアが強いられ、妙なる階調を発揮します。ところが他方で、バイオレットの染みを覆うに及び、色相にギアが入り、そこには属さない何ものか、さしずめ黒衣として身を引いてしまいます。修正液のように、あたかもないものとして振る舞うのです。

 断層を跨ぐたび、まなざしは、的確に速度を編み出し新たな質を経験します。この経巡りが絵画の味わいを織りなすわけです。しかし、サーキットには原理上終わりがありません。継起する質を闇雲に消費したところで、ちぐはぐな印象を積み上げるばかりです。
 そこで、経験を取りまとめる屋台骨が導入されます。フレームです。貼り込まれた紙や筆触の縁など、じつは画中にはフレームがひしめき合っています。画面を分かつ断層じたいが、フレームとして、自ら生みだす数多の質を取りまとめもするのです。貼り込まれたあらゆるものが、この両義性を担います。トレーシングペーパーやクリアファイル(明度や彩度の操作、たわみによるレリーフ状の位相差を招く)、それから布地やリボン(肌理や浸透の度合い、象徴上の対比を誘う)。


 いうまでもなく、作品の縁も例外ではありません。画中を取りまとめるのみならず、展示空間に断層をさしはさみます。縁がほつれていたり、複数作がずらされつつ重ねられたり(下層の絵はまず見えない。ただ、僅かに縁が覗きみえるよう配慮されている)。あるいは、小さな合板が、パネルの縁に沿って外へ接ぎ木されたり。フレームの完結を避け、内外の区分けを揺るがすのです。さらにそれが、画中の色面よろしく、会場のあちこちへ割り振られます。排列がアイレベルへ収斂することはありません。
 また、壁面には、あたかも画中の破れ目を踏襲するかのようにスリットまで設けられ、コーナーにはシルバーの帯があしらわれます。帯の照り返しは、外光のさすスリットを反復すると同時に、壁面の縁を曖昧に暈します。会場の構造さえも駆り立てて、幾重にもフレームが励起されているのです。その上で、シルバーの帯は、形状や効果を通して画中のリボンや筆触へ折り返されます。
 歩を進めるに従い、会場と作品はともに刻々と仕切りなおされ、そのつど何らか質の偏りをフレームアップします。ただしそれは、必ずしも物理的な縁に一致するとは限りません。フレームとは、あくまで質(内包)を仮留めする働きであって、外延を確定する形式ではないのです。

 勢いで書き連ねているので、読みにくいことこのうえないかと思われます。いつにもまして面目ないったら。。
 でも、最後にもう一点。基調色にバイオレットが選ばれているのは何故か?これだけ触れて締めたいと思います。

 消去法なのは間違いないのだけれど(ご本人にも確認済み)、だからこそその経緯を裏打ちする理路に興味が湧きます。
 まず、どの作品も、求心力を削ぎフレームが弱められているため、インスタレーションに仕立てた場合、互いに融和して空間が閉じてしまう恐れがあります。まして膨張色だったならなおさらです。だから、寒色系によって拡張性を事前に回避しておかねばならない。
 と同時に、色彩の冴えも確保する必要がある。つまり互いに引き立て合う補色にも寒色系をあてられるバイオレットが相応しいわけです(厳密にはバイオレットの補色はイエローだが、レッドバイオレットのそれがイエローグリーン。きわきわの戦略だ)。
 しかも、バイオレットにはレッドとブルーが潜んでおり、要所で多彩な工夫が見込めます。実際、リボンには、シルバー、グリーンとともにレッドが採用されていました。

大嶋貴明個展 絵画の身体へ

会期:2015.10.20-11.1
時間:11:00-20:00(日曜のみ-18:00)、月曜休廊
会場:TURNAROUND(ギャラリー ターンアラウンド)
   仙台市青葉区大手町6-22 久光ビル1F

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大嶋貴明氏の小品展

  • 2008.03.19 Wednesday
  • 13:35
きのう展示替えを済ませました。
本日から3月末まで大嶋貴明さんの小品をご覧頂けます。
よろしければどうぞ!
なお、ギャラリー青城さんでも大嶋さんの個展が同時開催されています。
そちらの期日は、本日から3月24日までです。
あわせてご覧いただけると嬉しいです。

ギャラリー青城
仙台市青葉区錦町1-12-7 門脇ビル1F
tel.022-222-8067
11:00-19:00(最終日-18:00)

弊店の展示光景
大嶋さん正面
大嶋さん紫
大嶋さん脇2
大嶋さん
大嶋さん脇1

大嶋さんのドゥローイング2003-2007

  • 2007.10.11 Thursday
  • 20:11
予告どおり、写真をアップします。
引きつづき大嶋貴明さんのドゥローイングです。
前回は5年前のものを中心にご紹介しましたが、今回は主に3年前に描かれたものをお借りしました。といっても5枚のうち3枚は、今回あらたに手掛けられたものなのですが。
伺ったところではどうやら、過去の作品を見返しているうちに触発されて、やり直してみたくなったとのことなのでした。
<>がか□いのはな2005、はちすちふち2007
なたのせいではな2005
すぎうきしき2007、こうそうたう2007
一番最初の写真にある、大きめの作品について、簡単なご紹介。
今回の展示は、3期にわたる展示のうち第2期にあたるわけですが、そもそも大嶋さんに作品をお借りしようと思ったきっかけが、この作品でした。
たまたま遊びに伺ったアトリエで拝見したのが1年ほど前、それ以来ずっと気になっていて、店舗をオープンするにあたり、是非にとお願いさせて頂いたのでした。。。

支持体に黄土色のボール紙、その大半を茶系の油絵具が覆っています。全体的に明度が抑えられ、そのうえ近しい色合いのため、色面は漠たる広がりを呈しています。
しかし一様ではありません。層をなす画面は、色面が同じ絵具であるにも拘らず、下層の状態(絵具のみならず、粘土や砂が敷かれています)に応じ様々な肌理を露にし、メディウムの加減によって筆致の力動を至るところに定着させています。まるで混沌から色面が生成し、それが次々と多様な肌理や筆致に微分してゆくかのような趣です。
生々流転する画面は、否応なく視線を巻き込み、際限なく引き回します。視線は壊乱し、感覚の快楽に溺れるほかありません。
おそらく、強烈な白の飛沫が導入される必然性は、ここにあるように思われます。
周囲との明度差がひときわ著しいそれは、ほとんど光そのものです。これは、画面に渦巻く、生々流転の全過程と、はっきり一線を画しています。
非物質的な光は、止めどない物質の変転を瞬時に相対化し、微睡みから視線を救済してくれるのです。
かといって、光による一神教が打ち立てられようとしているわけでもなさそうです。
なにしろハイライトは一ヶ所ではなく、二ヶ所にあしらわれています。しかも、一方は下層と同色の絵具がうっすら掛けられ、引き延ばされながらやがて下層に消え入り、他方はエッジを茶系の絵具に侵されています。
視線の救済は、少なくとも二度暗示され、そのうえ光自体が物質の変転に巻き込まれつつあるのです。つまり、ここでの賭金は、救済のその劇的さにではなく、物質による翻弄と非物質的な救済の往還、反復にこそあるように思われます。

展示風景(大嶋貴明2001-2)

  • 2007.08.11 Saturday
  • 22:39
ようやくデジカメを手にすることが出来ました。
といっても自分のではなく、お借りしてるものなのですが(Tさんに深謝!)。。。

だいたいこんな展示風景です。
雰囲気だけでもお伝えできるかしら。

大嶋さん2001-2.4
大嶋さん2001-2

大嶋さん2001-2.5
大嶋さん2001-2.2

大嶋さん2001-2.3

大嶋さんのドゥローイング2001-2002

  • 2007.08.06 Monday
  • 22:01
弊店は古本屋なのですが、美術作品の展示もしています。
お客さまのなかには作品目的で足を運んで下さる方もいらっしゃり、有難いことこの上ありません。

さて、ただいま展示しているのは、大嶋貴明さんのドゥローイングです。
ただ実は、ご本人としては発表するおつもりがないまま描き溜めていたものだったりします。
というのも、何度か私的に見せて頂いているうちに、他の人にも見て頂きたくなってしまい、我が儘を云って、この度お借りしたという経緯があるのでした。。。

なお、今のところ5年前に描かれたものを公開していますが、展示替えも予定しています。3期に分けて、次は3年前のもの、最後に現在制作なさっているものを、と考えています。
展示期限はとくに決めていません。さしあたり8月中はこのまま継続するつもりですので、ご覧いただけると嬉しいです。展示替えは秋ごろかしら。

最後に簡単な作家および作品の紹介をさせて頂きます。

作家略歴
1955年   仙台生まれ 現在51歳
1995年から 宮城県美術館普及部職員
        (現)宮城県美術館教育普及部 技術主査
主な活動
1975年から1994年
  美術作家   個展、グループ展、演劇公演(美術)など多数
  美術教育   大嶋画塾主催 ほか
1995年から現在
  美術と美術館に関する教育普及活動
  作品発表以外の様々な美術に関係する活動
2001年以降
  作品について私的に試行中

展示作品は5点、どれも紫の色面を基調としたドゥローイングです。
基調が中間色なうえ、色面はアクリルと油彩で淡くニュアンス豊かに塗られています。それゆえ画面は、観者の視線をやさしく受け止めてくれます。おまけに色面の縁が、偶然にまかせて滲んでいるため、余計に観者はそこに吸い込まれそうになります。
ところがその微睡みも長くは続きません。色面を侵すように刷毛跡の生々しい筆致が、とりわけ木炭を用いたそれが、視界を横切るからです。しかもそのストロークは、一見すると荒々しいものの、闇雲にあしらわれたり、自然に振り下ろして出来るものでもなさそうです。慎重に屈曲が施され、安易な偶然性(アクションペインティングの亜流)や画家の手癖が周到に回避されているのです。そこで浮かび上がるのは、描く所作(もしくは操作性)から切り離された、筆致の動勢そのものです。
色面の豊かな広がりと緊張を強いる筆致の動勢。これらは質的にまったく異なるうえ、両者とも自律した独自の系を形成しています。おそらくこれだけだと、画面は分裂したままだったに違いありません。そこで作品は、両者の媒介項を導入します。アルミの銀粉です。
銀粉は塗料に混ぜられることによって、一方で色面にあわせて拡散し、他方で筆致にあわせて凝集します。つまり色面と筆致の両方によく馴染み、両者の矛盾を解消してしまうのです。
しかし銀粉の役割はそれだけに留まりません。その拡散と凝集は、各所で独自の運動を見せています。必ずしも色面や筆致に追随しているわけではないのです。むしろ反射する銀色は、色面のもつ寛容さを許しませんし、粉末の浮遊感は筆致の動勢とは相容れません。つまり銀粉もまた色面や筆致と同様、自立した系を形成しているのです。
そして実は、木炭はおもに筆致に用いられていますが、ところによっては色面を形成し、逆に色面を覆う紫が随所で油彩の筆致に転化されたりしています。さらに木炭の筆致はところどころでマットな肌理を呈し、銀粉と入り乱れています。
こうして色面と筆致、そして粉末(後で伺ったところ、パステルも用いられているとのこと)は、互いに独立した系を担いながら、目紛しく交流し合い、複雑な世界を立ち上げています。誤解のないよう申し添えておくと、ひとつの画面を構成するために、三つの要素が配置されているのでは断じてありません。ここには系同士の複雑な交通があるばかりで、盤石な安住地はありえません。かりにあるとしてもそれは、見ることを止めた時、つまり系同士の交通をひとまず遮断したときようやく訪れるものに過ぎないでしょう。

設置完了!

  • 2007.07.18 Wednesday
  • 00:51
展示スペースに設置すべく、
大嶋貴明さんのドゥローイングを搬入し終えました。
お仕事でお疲れのところ遅くまでお付き合い頂き、本当に有難うございました!
(手伝ってくれたSさんにも感謝!)

本棚など家具のある空間にどう作品を着地させるか。
もちろん部屋の装飾に堕すことなく、です。
何度も試行錯誤した結果、
今ある展示光景になりました。
いずれ写真も掲載できたらと考えてはいますが、
ぜひ皆さまには実際に目の当たりにしてほしいものです。
他にはなかなかない空間になっていると思います。

ところで、明日ようやく電話の開通工事をします(この記事は自宅で書いてます)。
プロバイダの都合で、しばらくネット環境が悪くなるはずなので、
もしかしたらブログの更新もやや停滞する恐れがあります。
もしそうなったとしても、ネット環境が整い次第、
すぐ復活するつもりですので、
その折にはまたヨロシクです。

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