第2回 志賀理江子 試論(分載3)

  • 2012.11.06 Tuesday
  • 20:50
 いよいよ明日から!志賀理江子さんの個展「螺旋海岸」が始まります。
 2008年、彼女は名取市にある海にほど近い集落、すなわち北釜へ移住します。その後、東日本大地震を経たのち今にいたるまで、当地で写真を制作し続けてきました。その成果がついに公開されます!

 ★ 志賀理江子 螺旋海岸
  会期:2012.11.7-2013.1.14(休館日11.22、12.29-1.4)
  時間:10:00-19:00(12.1-12.28のみ10:00-20:00)
  料金:一般100円(大学生・専門学校生含む)、高校生以下無料、豊齢手帳・身体障害者手帳など持参につき半額
  会場:せんだいメディアテーク(仙台市青葉区春日町2-1)


 ちょー楽しみなのに、ぼくは来週の定休日までおあずけです。とほほ。。
 いっぽう弊店でも来年の3月ぐらいから志賀さんの写真展を予定しています。2009年にタイの恋人たちを撮影したものです。バイクを二人乗りする彼ら、うしろに座る女性のまなざしを車で併走しながら志賀さんはカメラに収めています。とても魅惑的。こちらも乞うご期待!

 The Japan foundation,Bangkokより転載
 でも、その前に、今週の土日から来年の2月にかけては中村綾緒さんの写真展が弊店にて開かれます。年末に展示替えも予定。2期構成です。
 さらに、展示の皮切りとあわせて、市内別所にて投影会も実施します。もう再三再四お伝えしていますが、念には念を入れますよー。ホールさんにてこの土日11/10-11、初日10(土)には19:00-作家トークもあります。お誘い合わせの上ぜひ遊びにいらして下さいませー。ぼくも閉店後に駆けつけます。

 中村綾緒公式ホームページ:nakamuraayao

「あつめたひかりをそらにかえすツアー in 仙台」
 ★ お庭投影会
  会期:2012.11.10-11(土日)、11/10は19:00-解説&トーク
  時間:17:00頃-21:00頃
  会場:全部・穴・会館<ホール>(仙台市青葉区大手町3-2)
  料金:¥500(付ワンドリンク)

 ★ 写真集と珈琲、古本のじかん
  会期:前期2012.11.10(土)-12.30(日)、後期:2012.12.31(月)-2013.2.24(日)
  時間:10:00-20:00(土日のみ-19:00、火曜定休)
  会場:書本&cafe magellan(仙台市青葉区春日町7-34)
  料金:無料
  ※ 年末年始も通常営業(1/1(火)は定休)


 閑話休題。
 志賀さん試論、これにてひとまず終了です。
 駆け足で彼女の仕事を(写真集限定ですが)振り返ってきました。来る個展「螺旋海岸」が何らかの節目になるのは間違いなく、とにかくそのまえに総ざらいしておきたかった。法をめぐる一貫性と、それにも拘らずいやそれ故にこそ変貌を遂げざるをえない、彼女のたしかな足取りがあらためて確認できたと思います。とはいえ、まだまだ語り残したことは山ほどあります。ある方からご指摘頂いた「契約」の問題も今後の宿題です。とまれ、彼女のひたむきさにはほとほと脱帽するほかありません。次はどんな展開が待っているのか、いよいよ明日から。
 これまでの分はこちらからどうぞ。
第1回志賀理江子試論 ―まなざしと法―(分載1-4)
★ 第2回志賀理江子試論 ―まなざしと法―(分載1)(分載2)

志賀理江子公式ホームページ:Lieko Shiga

***
第2回 志賀理江子試論 ―まなざしと法―(分載3) 高熊洋平

(承前)
3 『カナリア門』
 『CANARY』の経験は、志賀に相当な混乱をもたらしたらしい(★13)。このままでは先に進めないと思いつめ、彼女はその後1年あまりをかけて検証作業に没頭する。その成果が『カナリア門』だ。ほぼ徹頭徹尾、右頁にプリントが直接貼り込まれ、それに対応するテクストが縦書きで左頁に添えられている。見開きごとに主題が仕切りなおされる(★14)
 写真はみな『CANARY』所収のものだ。それをあえて見づらく仕上げている。どれも小さいうえにオリジナルを再撮影したものばかり。反射光がうつりこみ、階調も飛んでは潰れる。ただし、1点ごとに光源や光量など条件が操作されている。白い雪景色がことさら暗くされたりする(「樹海」)。『CANARY』の現場さながら平面のプリントに演出を加えているのだ。不鮮明さによってオリジナルが否認され、『CANARY』のありうべきもうひとつの姿を救い出そうとしている。『LIly』の再撮影とは大違いだ。プリントへ没入することはもはやない。むしろ、露骨な反射光がそれを阻む。再撮影はオリジナルを別様に経験するためにこそ適用される。

 かたやテクストも『CANARY』を見返しながら撮影時の背景を救い出そうとしているようだ。おおむね当時の背景とともに、その発端である強い思い込みやその後の経緯が添えられている。そして、前者をさしおき、後者をとおして世界が見なおされる。例えば、あるとき被爆者の遺族から当時の惨状を聞き、別の機会に火を噴く大道芸人に会う。すると、原爆の話で志賀の頭はいっぱいになってしまう。やがて、頭上に火を浮かべて人を撮らねばという焦燥に駆られるまでに至る。そして、おなじテクストの終盤に突如、イメージ一般に関する彼女の確信と祈りが綴られる(「裕介の雲」)(★15)。つまり、ある特異な観念によって先行する事態が否認され、あらためてその観念から世界が立ち上げなおされる。そこには論理の積み重ねや説得的な弁明は一切ない。したがって、これは写真の解説にはなっていない。まして回顧談ではなおさらない。読んだところで写真の理解が進むとは限らない。あくまで撮影時の背景を読み替え救済することが目的なのだ。ただ、そのためにはいったん所与の事態につき従う必要がある。その受苦が未だ言語化しえないとすれば、読み替えすらままならない。白紙の頁があるのはそのためだと思われる(「ドミニク」)。
 プリントとテクストはその内容が近づくことはあれど、一致することはついぞない。無論どちらか一方に還元しきることなどできはしない。ただ、否認という形式をとおしてのみ両者は共鳴する。そして、その限りでテクストは身を以て世界へのまなざしそのものを教えてくれている。プリントとテクストは互いの鏡像であり、見開きの誌面はその形式を映しあう合わせ鏡になる。
ところで、撮影の背景が読み替えられた波及効果か、全体の構成まで刷新されている。背景を共有するプリントがブロックを形成し、配列の錯綜が払拭される。それにともない、重複がもたつくと看做されたのか、5点が間引かれ、2点が差し替えられている。タイトルの変更も27点に及ぶ。

4 結
 法こそがまなざしを可能にする。この命題が志賀を規定している。ところが、彼女はことあるごとにそこから独自の応答を展開する。そのつど法は、ときに荒れ狂う暴力そのものと化し、またあるときには受苦の極みに救済をもたらしもする。そこで志賀は、法を担って写真を切り裂くか、さもなくば法に従い法外な労力を現場へ投入する。一方で『Lily』が加速する破壊の累積から弾き出されれば、他方では『CANARY』がそのつど増殖する「変身」の抜け殻として溢れ出す。いずれにしろ、志賀の歩みには法とわたり合う必死の倫理が貫いている。前者では法を経験の彼岸に見据え、後者では法を別様に経験しなおす。そうすることで、おのおの自由を担保しその身を賭して倫理を試す。ついては、頁をめくる観者をも巻き込み、まなざしそのものが厳しく問われる。見るべきものが見いだされるために。(第2回了)

【注】

★13 「『CANARY』は滞在制作なんですけど、アーティストが美術館に招かれて、その個人とまったく関係ない土地にわざわざ行って滞在して、しかもその土地にまつわる作品をつくって、そのうえ発表までするという、その違和感たるや凄まじくて、最初は結構混乱した。…いろんな混乱があって、その混乱したものが『CANARY』っていう写真集になった。それから、混乱して整理できないものを徹底的に検証しないと、自分が見せる意味とか、持つ責任とかわからないと思って、言葉で書いてみようと思ったんです。それが『カナリア門』になりました」(『じぶんを切りひらくアート』高橋瑞木 編著、フィルムアート社、2010、177頁)。
★14 長文のためか次の箇所のみ例外。「毛皮を着た人 | 頭」『カナリア門』、68-69頁。
★15 前掲書、38-39頁。

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