第2回 志賀理江子 試論(分載1)

  • 2012.11.02 Friday
  • 15:52
 本題まえにお知らせです。
 つい先日、焼き菓子つばめどうさんのお菓子を入荷いたしました!
 ボタンクッキーとくまさんサブレ。ともに1袋180円です。ぜひご賞味あれー。

 前回ご紹介しましたが、もういちど。なにせもう1週間後ですから。

 中村綾緒さんの投影会があります!来週の土日(11/10-11)かぎり。どうぞお見逃しなく!!光や色へ輪郭が溶けては結ぶめくるめくイメージ。その没入感が投影によっていっそう引き立ちます。
 また同日より、弊店でも彼女の写真展が始まります。2期にわけて来月2月まで。あわせてご覧下さいね。
「あつめたひかりをそらにかえすツアー in 仙台」
 ★ お庭投影会
  会期:2012.11.10-11(土日)、11/10は19:00-解説&トーク
  時間:17:00頃-21:00頃
  会場:全部・穴・会館<ホール>(仙台市青葉区大手町3-2)
  料金:¥500(付ワンドリンク)

 ★ 写真集と珈琲、古本のじかん
  会期:前期2012.11.10(土)-12.30(日)、後期:2012.12.31(月)-2013.2.24(日)
  時間:10:00-20:00(土日のみ-19:00、火曜定休)
  会場:書本&cafe magellan(仙台市青葉区春日町7-34)
  料金:無料
  ※ 年末年始も通常営業(1/1(火)は定休)


 作家の公式ホームページはこちら


 それから、例年どおり今年も「仙台写真月間」が開催されています。まだこの火曜日に始まったばかり。リレー形式で今月25日まで続きます。ちょうど弊店で展示(11/9(金)まで)して頂いている小岩勉さんも11/13(火)〜11/18(日)に予定されています。会場はSARP。こちらもぜひ!
 奇しくも今年は名実ともに仙台写真月間になりそう。中村綾緒さんと志賀理江子さんの展覧会とも重なります。会場も歩いてまわれる距離です。はしご、おすすめです!

 閑話休題。

 いよいよです。志賀理江子さんの個展までもう1週間を切りました。来週の水曜日11/7から。つい先日にはご本人がポスターをお持ち下さり、速攻で貼らせて頂きました。森大志郎さんデザイン。かっちょいー。

志賀理江子 螺旋海岸
 会期:2012.11.7-2013.1.14(休館日11.22、12.29-1.4)
 時間:10:00-19:00(12.1-12.28のみ10:00-20:00)
 料金:一般100円(大学生・専門学校生含む)、高校生以下無料、豊齢手帳・身体障害者手帳など持参につき半額
 会場:せんだいメディアテーク(仙台市青葉区春日町2-1)


 そこで、というわけでもないのですが、この春に書きつけた試論のつづきを掲載します。3回に分かれる予定です。
 前回の分はこちらからどうぞ。
第1回志賀理江子試論(分載1-4)

***
第2回 志賀理江子試論 ―まなざしと法―(分載1) 高熊洋平

(承前)
2 『CANARY』(★1)
 2006年、志賀は3つの都市から招聘され、各地で滞在制作を行った。仙台とブリスベン、そしてシンガポールだ。いずれも彼女には馴染みがないため、糸口として住民にアンケートを実施する。すなわち「自分の住む地域で、個人的に感じる<明るい場所>と<暗い場所>はどこか?」(★2)しかる後、回答を地図に転記し現地を辿るのだ。撮影は、この道中に巻き起こる出来事をモチーフとして進行した。写真集『CANARY』にはそのうち61枚(カバーを除く)が収められている。
 モチーフが中央を占め、まなざしを釘づけにする。みな突拍子がなく単独で屹立している。さらに主題のおなじ写真が引き離され、あえて前後させられる。撮影地の頻度にも著しい不均衡が見てとれる(★3)。とにかくてんでばらばらだ。前作『Lily』のような一貫した配列は望むべくもない。おまけに、進行方向に対し画面がことごとく右上がりに傾斜、畢竟まなざしの滑走は食い止められる。そのつど立ち止まり、一枚ごとに滞留を余儀なくされる。注視が強いられるのだ。いまや、前後の向きに拘らず、直線状の推移そのものが無効になる。写真は互いに独立し、各自が宙に浮く。なぜかくもまとまりを欠くのだろうか。

 『Lily』にはサディスムの暗い意志が貫いていた。プリントを破壊する、その累積的な加速が全体を統べる。超自我こそが志賀の選択だった。それが『CANARY』になるや、加傷はたった1点に激減(「空を飛ぶ方」)。孤立が際立つ。かたやプリントを操作する代わり、現場における演出がいやまし目にとまる。それどころか、並々ならぬ労力が察せられるのだ。何しろ、大量の海水を網で吊り上げ、高所から放つことまでしてのける(「鯨の涙」、「ヨナは腹を裂いた」)。滞在先で出会った出来事が触発し、彼女をそう仕向けたのは間違いない(★4)。おそらく志賀のひとみには、経験される対象が法そのものとして立ちあらわれている。超自我が外部へ委譲されたのだ。すると、巡り会う対象ごとに法が発動し、経験の数だけ複数化する。志賀はそのすべてに従う。『Lily』が一途に描くのは、絶対的な理念、いわば大文字の法へ一直線に漸近する運動だった。他方『CANARY』が披露するのは、任意の経験、つまり数ある小文字の法に応じて、そのつど服従の成果を増殖させることなのだ。熊追いに同行した記憶が、桃を狙撃する実験に実を結び(「鉛の種」)、ある日の蠅の羽音が、ずっと後日に膨大な蠅の襲撃を招く(「レストラン スタージ」(★5)。一事が万事だ。モチーフが爆発的に多様化するのは避けられない。全体の構成が錯綜するのは必然だ。
 法はもはや、それをふるうことで必死にその現前が確かめられる必要はなくなった。すでに身の回りに溢れているのだから。『Lily』のように彼岸には見込まれない。しかし、それは服従を強いる限りにおいて受苦の経験でもある。すると、法がありふれた既成事実なら、世界は受苦に満ちていることになる。これはモチーフからも窺える。無理な勾配で立つ男性(「グランドホテルへようこそ」)。醜い剥製(「裏庭」「ギフト」)等。世界は不当や違和、危機に瀕している。では、法など放棄すべきだろうか。そうすれば受苦に拘わずに済むのだろうか。だが、同時に何もかも見失うはめに陥るだろう。生理的な一機能へ頽れるほかない。やはり法こそがまなざしを可能にするのだ。法は、受苦以外の何ものでもないにも拘らず、なお他方ではまなざしにとって是が非でも必要なのだ。志賀は、この二重拘束を条件とし、その厳格な回答として写真を制作する。つまり、まず服従を受け入れ、そのうえで受苦を別様に経験しなおすこと。懲罰を快楽の源に読み替えるマゾヒストの戦略だ(★6)。受苦が宿命づけられたこの世界において、救済のためにはこのプロセスを踏むよりほかに道はない。志賀の照準はこの一点めがけて絞られる。彼女が現場に途方もない労力を費やすのはこのために違いない。受苦に身を曝すことが、制作の必要条件になっている。(つづく)

【注】

★1 『CANARY』志賀理江子 著、赤々舎、2007。
★2 『カナリア門』志賀理江子 著、赤々舎、2009、5頁。以下本稿では『CANARY』の背景に触れる箇所はすべて同書に拠る。ただし、あくまで補助に留め『CANARY』そのものへの内在を心がける。
★3 日本47点、オーストラリア12点、シンガポール1点、ドイツ1点。収録されている写真は必ずしも滞在都市とは限らない。周辺地域にも広く及ぶ。加えて、招聘の有無に拘らず当時在住していたドイツが撮影地のものまで含む(本人確認)。
★4 『カナリア門』、10-11頁。
★5 前者は前掲書、74-75頁。後者は同書、80-81頁。
★6 マゾヒストにおいては「法のこの上なく厳密な適用が、通常期待されていたはずのものとは逆の効果(たとえば鞭で打つことは、勃起を罰したりあらかじめそれを禁止するどころか、勃起を挑発し強固なものとする)を生む」(『マゾッホとサド』ジル・ドゥルーズ 著、蓮實重彦 訳、晶文社、1973、112頁)。しかし、懲罰や苦痛そのものが快楽なのではない。むしろ、真の快楽はそれらを経た先にこそ見いだされる。すなわち「彼(筆者注:マゾヒスト)は、懲罰を禁断の快楽を可能にする一条件とすることで、有罪性を『回転』させるのだ。その事実によって、方法こそ異なってはおれ、マゾヒストもサディストにおとらず法をくつがえしている」(同書、113頁)。なお、本稿はドゥルーズの同書とともに、その啓発的な読解である千葉雅也による次の論考にも多くを負う。「輪郭を救うこと、文字通りになること ―ジル・ドゥルーズの美学と哲学における超越論的変形をめぐって―」『表象』第2号、月曜社、2008、264-280頁所収。「彼岸のエコノミー ―ドゥルーズ『マゾッホ紹介』再読:デリダ、マラブーのフロイト解釈と比較しつつ―」『現代思想』第36巻第15号、青土社、2008.12、150-162頁所収。

***

スポンサーサイト

  • 2017.04.22 Saturday
  • 15:52
  • 0
    • -
    • -
    • -
    コメント
    コメントする








        
    この記事のトラックバックURL
    トラックバック

    PR

    calendar

    S M T W T F S
          1
    2345678
    9101112131415
    16171819202122
    23242526272829
    30      
    << April 2017 >>

    看板犬からご案内

    営業時間
    10:00am-20:00pm
    土日のみ-19:00pm
    定休日:火曜
    仙台市青葉区春日町7-34
    お店のホームページはこちらです。

    selected entries

    categories

    archives

    recent comment

    recommend

    links

    profile

    search this site.

    others

    mobile

    qrcode

    powered

    無料ブログ作成サービス JUGEM